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インフルエンザで「学級閉鎖」、ホントに意味ある?

明確なエビデンスはなかったが…

■教育に必要なのは科学的思考

 学校はですね、ちゃんと科学的な判断をすべきなんです。学校が科学的な判断をするということは、科学的な思考をするということです。

 どうしてかというと、学校・教師が科学的な思考ができなければ、当然生徒にも科学的思考を教えられないからです。

 科学的思考とは先生が「こうですよ」と教えたことを素直に「そうですか」と暗記して飲み込む能力のことではありません。先生が「こうですよ」と教えたことを「なぜ、そうなんだろう」と(高級な質問である)「なぜ」という質問をし、そして「本当にそうなんだろうか」と懐疑的な態度で思考する態度を言うのです。

 学校の先生の言いなりになって、言うことを聞くだけの日本の学校教育では本当の意味での科学的思考は身につかない。でも、ほとんどの学校が科学的な思考を生徒に教えず、「先生の言うことをとりあえず聞いとけ」と上意下達で「従わせてしまう」。従わせたら、科学もヘッタクレもない。

 そういえば、ぼくが中学生の時、数学の試験でバツをもらい、「正解じゃないですか」と先生に文句を言ったら、「俺が教えたやり方と違う方法で解いた」からバツだ、と言われてかなりがっかりしたことがあります。ま、その先生の授業、ちゃんと聞いていなかったことは認めますよ(ぼくは授業をほとんど聞かずにこっそり本を読んでいるような、先生的には「困った」生徒でした)。でも、先生に教わった解法を丸暗記するよりも、自ら解法を編み出すほうがずっと知的には高級な作業なはずです。ぼくが教師だったら花丸つけますよ。

 そもそも、日本の問題点は教育委員会や教師が文部科学省の言いなりになっていることです。これじゃ、先生自身だって科学的思考なんてできるわけがない。たとえ理科の先生であってもね。厳しいようですが、本当のことです。

 昔、円周率を3と習うか、3・14と習うか? という論争があったじゃないですか。あの論争そのものが非科学的な態度です。生徒に教えるのであれば、コンピューターにシミュレーションさせたりして、本当に妥当な円周率はどのくらいか検証させればよいのです。最初から答えを所与のものとして教えて覚えさせるのではなく、自分で確認させ、納得するまで議論を突き詰めてこそ、真の学校教育なんですよ。

次のページ学校は文科省の指導を右から左へ、にしてはいないか。

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岩田 健太郎

いわた けんたろう

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。NYで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時の臨床を経験。日本では亀田総合病院(千葉県)で、感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(ともに光文社新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『主体性は数えられるか』(筑摩選書)など多数。


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